アトツギによるイノベーションをどう実現するか——「Bridge北九州」の挑戦

アトツギによるイノベーションをどう実現するか——「Bridge北九州」の挑戦

北九州市と株式会社YMFG ZONEプラニング(YM-ZOP)が連携し、北九州市内の中小企業の後継者、後継予定者が抱える課題の解決を目指すプログラムを実施しました。参加したアトツギ(後継者・後継予定者)がプログラムを通じて、スムーズな事業承継と家業でのイノベーション創出を目指した取り組みです。

本記事のカタカナで記載している「アトツギ」とは、一般社団法人ベンチャー型事業承継により「先代から受け継いだ価値を、時代に合わせてアップデートすることで、その次の世代に託す時まで、存続にコミットする個人」と定義されています。

 

北九州市が主催し、YM-ZOPが運営を受託した「アトツギ未来創造プログラム Bridge北九州」は2024年度にスタートし、現在2期目を迎えています。本プログラムでは新規事業の創出や既存事業の見直しなど「家業の変革」を支援することに加え、熱意あるアトツギ同士の出会いの機会を提供しています。また、アトツギ向けピッチイベントへの出場サポートなども行っています。

2026年1月17日には、Bridge北九州2期 最終発表会が開催されました。プログラム参加者8名による成果発表およびフィードバックが行われ、約半年間の取り組みの成果が示されました。本記事では、「Bridge北九州」の全容と、このプログラムが地域にもたらした成果を紹介します。

1. アトツギが抱える課題と、Bridgeが目指すもの

中小企業の後継者、後継予定者は多くの課題を抱えています。外部環境が大きく変化する中で既存のビジネスモデルが通用しなくなる、社内の体制も旧態依然としている、そんな中で家業を10年、20年先まで存続、発展させなければなりません。

こうした厳しい環境に置かれている後継者に対し、Bridge北九州では、家業における既存事業の見直しや新規事業の創出等「家業の変革」に向けた支援を実施しています。加えて、同じ境遇で悩みを抱えている後継者同士や後継者をサポートする支援者とのネットワーク構築も行っています。また、状況に応じてアトツギの新規事業アイデアを競い合う「ピッチコンテスト」への出場支援も行ってきました。

これら3つの支援を組み合わせながら、後継者が抱える課題解決を目指しています。

2. 産官連携で実現する持続可能な後継者支援モデル

Bridge北九州は、北九州市が主催し、YM-ZOPが運営を受託したプログラムです。北九州市の「アトツギ伴走支援運営業務」として、産業経済局 中小企業振興課が主催しました。北九州市内の中小企業の後継者、後継予定者が抱える課題を解決するために必要な支援を提供することで、プログラム終了後に、スムーズな事業承継と家業内でのイノベーション創出を目指しています。

3. 5つの支援と段階的なカリキュラム

Bridge北九州は2024年度からスタートし、2期目となる2025年度のプログラムは2025年8月から2026年1月までの約6か月間で実施されました。

全7回の講義・ワークショップを中心に構成され、1か月に1〜2回の個別メンタリングも実施。参加費は無料で、北九州市内に主たる事業所を有する中小企業のアトツギ(後継者・後継予定者)を対象に書類・面談などにより選考を行い、参加者を選定しました。

プログラムの5つの柱

Bridge北九州は、アトツギ一人ひとりの状況や課題に寄り添いながら、事業承継と家業の変革を後押しするため、5つの支援の柱を組み合わせたプログラムです。

 

第一の柱は、アトツギコミュニティによる支援です。 北九州市内のアトツギや支援者を中心としたコミュニティを構築するとともに、市外のアトツギコミュニティとも接続しました。「アトツギにありがち」な悩みや、新規事業開発に関する課題など、気軽に相談しやすい環境を提供しています。

第二の柱は、全7回の講義・ワークショップです。 全国で活躍する先輩アトツギ経営者や専門家を講師として招き、8月から毎月1回程度、アトツギによる家業内でのさまざまな挑戦に向けた実践的な講義・ワークショップを開催しました。

第三の柱は、メディア露出を通じた認知拡大支援です。 県内外のメディアと連携し、参加者の取り組みや想いを発信することで、アトツギ自身や事業の認知向上を後押ししました。

第四の柱は、専門家による伴走支援です。採択企業ごとに専門家が伴走し、マインドセットや事業プランの壁打ち、外部専門家とのマッチングなど、ニーズに応じた支援をリアルとオンラインを併用して行いました。

第五の柱は、ピッチイベントへの出場支援です。 希望者には、中小企業庁が主催するアトツギ向けのピッチコンテスト「アトツギ甲子園」をはじめ、各種ピッチイベントへの出場を目指した集中的なサポートを行いました。

4. 最終発表会で見えた成果——8名のアトツギが描いた家業変革のビジョン

2026年1月17日、COMPASS小倉 イベントスペースで「Bridge北九州」2期の最終発表会が開催されました。プログラム参加者による発表およびフィードバック、基調講演が行われ、約半年間の取り組みの成果が披露されました。会場には参加者の家族、所属する会社の社長や社員、金融機関などの支援者、他地域のアトツギなど多くの方が来場し、最終発表会終了後、同会場内にて交流会も行われました。

 

基調講演には、クラウン製パン株式会社 常務取締役の松岡寛樹氏が登壇しました。テーマは「アトツギはアトをツグからアトツギなんです」。松岡氏は北九州市生まれ北九州育ちで、大学院修了後15年間にわたりパン製造業界に従事し、家業に携わって13年目を迎えています。自らもアトツギとして実践を重ねてきた経験を、参加者に語りかけました。

 

また、ゲストコメンテーターとして、山岸勇太氏(一般社団法人ベンチャー型事業承継 事務局長)、鈴木正靖氏(法律事務所Lux Linxs 代表パートナー弁護士)、立山冬樹氏(株式会社ゼロワンブースターキャピタル パートナー)が参加。事業承継、法務、ベンチャー投資など、多様な専門性を持つゲスト陣が、参加者の発表に対してフィードバックを行いました。

 

最終発表では、プログラム参加者8名が事業案を発表しました。それぞれが家業の強みやリソース、地域資源を活かした事業案を発表し、約半年間の学びと挑戦の成果を示しました。

5. 地域の豊かな未来を共創する——Bridge北九州が描く次の一歩

北九州市とYM-ZOPが連携して実施したBridge北九州は、地域の中小企業を支えるアトツギに寄り添い、事業承継と、その先にある家業の進化を後押しする取り組みです。スムーズな承継に加え、承継後の挑戦やイノベーション創出を見据えた支援を行ってきました。

プログラムを通じて、アトツギ同士のネットワークが構築され、互いに学び合い、刺激し合う関係が生まれました。同じ立場だからこそ共有できる悩みや挑戦を語り合い、支え合う——そうした関係性こそが、後継者にとって大きな力になります。こうしたつながりは、地域の未来を担う次世代経営者の育成基盤として重要な意味を持っています。

 

YMFGは、「グループサステナビリティ方針」のもと、ESG課題として特定したマテリアリティの一つ「地域におけるイノベーション創出、地域産業の成長サポート」に取り組んでいます。「Bridge北九州」は、この考えを具体的な行動として体現する取り組みです。

 

アトツギの挑戦が、企業を、地域を、そして未来を動かしていく。

YMFGは今後も、地域とともに歩み、持続的な成長を共創していきます。

 

株式会社YMFG ZONEプラニング
課長(当時) 三村晋也

約3年前、行政とともに地域の起業家をサポートする活動を行う中で、中小企業の後継者が家業内で新たなチャレンジを進める「アトツギベンチャー」という概念に出会いました。地域のアトツギは、家業で新たな取り組みに挑戦したくても、さまざまな障壁に阻まれています。私たちがサポートすることで、その障壁を取り除きたいと考えるようになり、アトツギ支援に力を入れるようになりました。
地域行政や域内外の専門家など、幅広いネットワークを活かした仕組みづくりは、YM-ZOPの得意とする領域です。2期にわたる「Bridge北九州」の運営を通じて、北九州市内中小企業のアトツギによる新規事業や社内改革の進展、そしてアトツギコミュニティの構築につながっています。今後もBridge北九州を含むアトツギコミュニティへの関与を継続し、地域の若い力を育んでいきたいと考えています。