観光消費拡大の鍵は“Modern Luxury層”。インバウンド富裕層誘客プロジェクト始動

観光消費拡大の鍵は“Modern Luxury層”。インバウンド富裕層誘客プロジェクト始動

2025年10月、株式会社山口フィナンシャルグループ(YMFG)は、株式会社ドリームインキュベータ(DI)、エクスペリサス株式会社とともに、地域観光の新たな可能性を切り拓くプロジェクトを発表しました。その名は「高付加価値体験の構築×インバウンド富裕層誘客プロジェクト」。舞台は山口・広島・福岡を中心とする中国・九州エリアです。

 

ターゲットは「Modern Luxury層」と呼ばれる新たな富裕層市場。このプロジェクトは、地域に眠る歴史・文化・食といった観光資源を高付加価値体験として再構築し、世界の富裕層旅行者を地方へ誘致することで、地域観光消費の拡大と地域経済の持続的な発展を目指しています。金融機関、戦略コンサルティング、富裕層観光ベンチャーという異業種連携による、地域共創の新たな取り組みです。

1.地域観光の新たな挑戦 —— 4社連携プロジェクトの全貌

このプロジェクトの最大の特徴は、金融、コンサルティング、観光という異なる専門性を持つ4社が連携し、それぞれの強みを掛け合わせることで、新たな地域観光モデルを構築している点にあります。

参画するのはYMFG、子会社の株式会社YMFG ZONEプラニング(YM-ZOP)、そしてDI、エクスペリサスの4社。では、なぜ今、インバウンド富裕層なのでしょうか。

異業種連携で創り上げる新たな地域観光モデル

YMFGは2024年3月にDIと資本業務提携を締結し、同社が持つ新規事業構想力や実装力を活かして地域課題の解決に取り組んできました。今回のプロジェクトは、この提携によって生まれた具体的な成果の1つです。

地域金融機関であるYMFGが培ってきた地域との深い繋がりと、DIの事業プロデュース力、そしてエクスペリサスが持つ世界8,000社以上の富裕層向け旅行会社ネットワークが融合することで、地域資源の発掘から体験設計、そして世界中の市場への販路開拓まで、一気通貫の価値創出を目指しています。

なぜ今、インバウンド富裕層なのか

日本政府は2030年までにインバウンド市場における消費額15兆円という目標を掲げています。しかし、これまでのインバウンド観光は主要都市圏に集中し、地方への恩恵は限定的でした。

 

一方で、富裕層旅行者は訪日客全体の約1%にすぎませんが、消費額では全体の約14%(約6,700億円)を占めるとされています。加えて、滞在日数が長くリピート率が高いという特徴も有しています。少人数でありながら消費額が大きいため、オーバーツーリズムといった課題を回避しながら、地域経済に大きな効果をもたらすことができるのです。

このように、「量より質」を重視するインバウンド富裕層は、地方観光の持続可能な成長を実現する上で、極めて有効な戦略といえるでしょう。

2.“Modern Luxury層”という新たな市場

今回のプロジェクトが焦点を当てるのは、「Modern Luxury層」と呼ばれる新しいタイプの富裕層です。従来の富裕層とは異なる価値観を持つこの層は、地方観光との親和性が高い点が大きな特徴です。

Modern Luxury層の特徴

Modern Luxury層とは、単なる高級品の消費ではなく、持続可能性や地域貢献、そして本物の体験価値を重視する富裕層を指します。自然やアクティビティへの関心が高く、ESG(環境・社会・ガバナンス)に対する意識も強いことから、その土地ならではの文化体験や、地域の人々との交流、環境や社会に配慮した旅を求める傾向があります。

なぜ日本の地方観光資源と親和性が高いのか

日本の地方には、長い歴史の中で育まれてきた伝統工芸、食文化、自然景観といった豊かな観光資源があります。これらは、Modern Luxury層が求める「本物の体験」「持続可能な文化の継承」「地域社会への貢献」という価値観と極めて高い親和性を有しています。

 

例えば、400年の歴史を持つ萩焼の陶工を訪ね、その技術や哲学の真髄に触れる体験や、地域の食材を使った究極のガストロノミー体験は、まさに彼らが求めるものです。YMFGは、こうした潜在的な需要と供給の間に存在するミスマッチに着目し、地方の豊かな資源と、それを求める富裕層とを結びつけることで、外需獲得のチャンスをビジネスとして具現化し、地域産業の持続的な発展を目指しています。

3.複数のエリアで展開する高付加価値体験

このプロジェクトでは、山口・広島・福岡を中心に、複数のエリアで特色ある体験プログラムを展開します。それぞれの地域が持つ固有の歴史・文化・食といった観光資源を最大限に活かした、ここでしか得られない体験を提供するものです。

「食・文化・歴史」を軸にした体験設計

各エリアの体験プログラムは、いずれも1〜2泊の少人数制で、専属ガイドが終日同行する形式。料金は1コースあたり数万円から数十万円を想定しています。地域の本質に触れ、その背景にある歴史や文化を深く理解できるよう設計されている点が大きな特徴です。

エクスペリサスが持つ高付加価値体験の開発ノウハウと、YMFGが持つ地域ネットワークを活かし、職人や生産者との直接的な交流も実現します。訪問者は「見る」「食べる」に留まらず、作り手の思想や地域に息づく文化そのものに触れることができます。

各エリアが提供する唯一無二の体験

下関では、日本の究極の美食「ふく」を最高の状態で楽しむガストロノミープログラムを展開。競りの見学から名店での食体験まで、フグ文化の真髄に触れることができます。

 

また長門では、茶陶の極みとして400年にわたり進化を続けてきた「萩焼」を今なお追求する陶工を訪ね、その技と精神に直接触れる体験を提供します。山口市では、西の京として栄えた歴史を背景に、武将が築き上げた風雅な美の系譜を体感する日本庭園の作庭体験を用意しています。

 

さらに岩国では、日本酒の世界的トレンドを生み出し続ける革新的酒造「獺祭」と、侍の武具展示の"聖地"を巡る、歴史と革新が交差する旅を企画。北九州では、まちに息づく人情と文化をテーマとしたディープツアーを通じて、地域の暮らしに根ざした魅力を体感できます。

4.それぞれの役割と価値創出の仕組み

このプロジェクトでは、4社それぞれが持つ専門性を活かし、地域資源の発掘から体験プログラムの企画・設計、そして世界市場への販路開拓まで連携して取り組んでいます。

地域資源の発掘から世界への販路開拓まで

YMFGは、地域金融機関として培ってきたネットワークを活かし、観光資源の洗い出しを担当。地域の産業や文化に対する深い理解を基盤に、潜在的な価値を持つ資源を見極め、本プロジェクトの出発点を支えています。子会社のYM-ZOPは、地域の事業者や自治体との強固な信頼関係を基盤に、観光資源を発掘し、関係者間の調整役としてプロジェクト全体の統括を担っています。

 

「社会を変える 事業を創る。」をミッションに掲げるDIは、新規事業構想力と実装力を活かし、地域課題の解決と新たな付加価値の創出を推進。2030年15兆円の消費額を目指すインバウンド市場において、観光立国化と地方創生という2つの国策課題を同時に解決することを見据え、本プロジェクトの構想と推進を担います。

 

エクスペリサスは、世界8,000社以上の富裕層向け旅行会社とのネットワークを有し、高付加価値体験の企画・設計から販売まで一貫して手がけます。官公庁事業での実績や福岡市主導の「西のゴールデンルート」構想への参画など、地域資源を活用した持続可能な観光モデルの構築において豊富な経験を有しています。本プロジェクトでは、その知見とネットワークを活かし、欧米を中心とした世界の富裕層市場に向けてツアーを展開していきます。

 

株式会社YMFG ZONEプラニング
課長 後 伊織

国としてもインバウンドの地方誘客を推進している背景から、本プロジェクトが始動しました。地域金融グループとして観光分野で新たな付加価値創出を目指すチャレンジ事業であり、業法面の確認や関係者の役割整理、新規プロジェクトとして成立させるためのスキームの確定など多くのハードルがありましたが、各社の専門性を活かし高付加価値体験の販売に至っています。
インバウンド誘客において、YMFGエリアの認知度はまだまだ低い状況です。まずは市場への浸透に向け、連携先との認知向上の取り組みが必要だと認識しています。
本プロジェクトを通じ、地域の観光産業が発展することで、観光インフラの拡充に向けた新たな民間投資機会を誘発し、ひいては地域産業の持続的な成長に繋がることを期待しています。

5.地域にもたらす未来 — 経済的・社会的インパクト

このプロジェクトが重視するのは「量より質」。少人数でありながら高い消費をもたらす富裕層旅行者を誘致することで、オーバーツーリズムといった観光公害を回避しながら、地域での消費を拡大することが可能になります。

インバウンド富裕層の来訪が拡大することで、宿泊施設や交通といった観光インフラへの民間投資の呼び込みに繋がり、観光を起点とした地域産業全体の付加価値向上と底上げが期待されます。

 

YMFGのパーパスは「地域の豊かな未来を共創する」。本プロジェクトは、まさにこのパーパスを体現する取り組みの1つです。地域の資源を再発見し、世界と繋ぎ、持続可能な形で次世代に継承していく——金融機関の枠を超えた、新たな地域活性化のモデルといえるでしょう。