この世界で。この街で。このじぶん。――YMFGブランドコミュニケーションの軌跡

この世界で。この街で。このじぶん。――YMFGブランドコミュニケーションの軌跡

企業にとって「ブランド」とは何を意味するのでしょうか。それは単なるロゴやスローガンではありません。企業の存在意義や価値観を体現し、社員や顧客と共有する「約束」といえるものです。金融機関にとっても、ブランドは信頼の証であり、地域とのつながりを深める重要な要素となります。

 

株式会社山口フィナンシャルグループ(YMFG)は2022年11月、新しいブランドスローガン「この世界で。この街で。このじぶん。」を発表しました。このスローガンとともに、ブランドCM、ブランドコミュニケーションブック、SNSなど、多様なコミュニケーションを展開しています。目指したのは、単なる広告ではなく、地域と向き合い、社員が誇りを持てる「バイブル」のようなコミュニケーション。本記事では、スローガン誕生の背景から各施策の狙い、そしてYMFGブランドが描く未来について概説します。

1. ブランドスローガン「この世界で。この街で。このじぶん。」誕生の背景

2022年のある日、YMFGの椋梨敬介社長と広報室長が東京のクリエイティブエージェンシー「タグボート」を訪問しました。「まずお話がしてみたい」という申し出から始まった対話が、新しいブランドコミュニケーションの出発点となります。タグボートとの対話、そして生まれたスローガンには、どのような想いが込められているのでしょうか。

東京のクリエイティブ集団との出会い

タグボートは電通から4人で独立したクリエイティブ集団です。椋梨社長は、「その姿にずっと共感していた」と話します。タグボート側も「山口から今後の日本の未来を語る社長の姿に、大好きな吉田松陰を重ねていました」と振り返ります。互いの想いが響き合い、プロジェクトが動き出しました。

 

対話の中で共有された重要な価値観がありました。それは「地域密着」という言葉が仕事を限定してはいけない、ということ。地域の先に日本があり、世界が地続きでつながっている――そうした認識の下、「全社員が誇りを持って共有できるバイブルのような広告を」という合意が生まれたのです。

ブランドスローガンに込められた2つの視点

こうして生まれたブランドスローガン「この世界で。この街で。このじぶん。」。このスローガンには、2つの想いが込められています。

 

1つ目は「地域の可能性」です。「地域」という言葉が仕事や未来を限定するのではなく、むしろ可能性が無限に広がっている。この地域で生きている人々と共に新しい誇りを生み出したい、という想いが込められています。

 

2つ目は「じぶんを考える」という視点です。グローバルとローカルが融合する時代に、「この世界のじぶん」という立ち位置で、「この街のじぶん」を考える。そうすることで、「この街での人生が世界に影響を与えていく」ということを伝え、地域の豊かな未来に向けて「未だ見ぬ世界へ一緒に歩いていこう」というメッセージが込められています。

2. ブランドCM第1弾――若者たちが見つけた「自分の場所」

2022年11月、ブランドスローガンとともに新しいブランドCMの放映が始まりました。若者2人を主人公にした2本構成で、2人の物語を通して「地方で生きる意味」を問い直しています。

2つのストーリー:「イノリ」と「ユズ」

1人目は祷キララさん演じる「イノリ」。東京で生まれ育った22歳の女性です。東京という街になじめず、世の中の東京中心の考え方にもずっと違和感を持っていました。旅行で訪れた山口で、今まで感じたことのない心地よさを感じたイノリは、山口に移り住み、新たな生き方を模索しはじめます。

2人目は青木柚さんが演じる「ユズ」。山口で生まれ育った青年です。東京で就職活動をしていたある日、大企業に勤めている先輩を訪ねました。そこで言われた一言がきっかけとなり、地元山口に戻って仕事を始めることを決断します。

3. ブランドCMの続編も――変化する勇気と、変化に適応する強さ

2023年12月、3作目のCMが公開されました。今回はユズがYMFG社員として働く姿を描き、「変化することを目的化せず、地域の未来のために変化する」という姿勢を表現しています。

社員60名がエキストラとして参加

「納得できないのか。修正しなさい」とユズを叱責する場面を演じたのは、山口銀行本店営業部で働く社員です。演技は初挑戦でしたが、YMFG社員のリアルで自然な様子を表現できると監督直々にスカウトされ、出演に至りました。

他にも多数の社員がエキストラとして参加し、本店社屋や近くの交差点で撮影が行われました。「YMFG社員が一丸となって制作に取り組み、リアリティーある社員の姿が表現できた」とCM制作担当者は語ります。社員がエキストラとして参加することで、CMへの興味関心がより高まり、エンゲージメント向上にもつながりました。

4作目「はじめの一歩篇」――地域から挑戦する

2025年1月、ブランドCMシリーズ4作目「はじめの一歩篇」の放映が始まりました。

テーマは「じぶんの人生から出ていこう」。地域の酒蔵で新たな日本酒ブランドの立ち上げに挑むイノリと、担当行員として本気で伴走するユズの姿を描いています。地域で生きることを選び、挑戦する若者たちの成長物語を通して、YMFGの企業姿勢を伝えています。

福岡広告協会賞を3年連続受賞

ブランドCMシリーズは、九州・山口の優れた広告作品に贈られる福岡広告協会賞を3年連続で受賞しています。第62回では大賞、第63回では銅賞、第64回では「フィルム広告30秒以内部門」にて銀賞、「フィルム広告長尺部門」で銅賞を受賞しました。

第64回の審査員からは、「この作品の『人生が冒険ならば、人生が一度しかないならば、動けば必ず動き出す、じぶんの人生から出て行こう』というメッセージは、混沌とした時代の中で、人々が本当に求めているものを鋭く捉えており、心に深く響く」とコメントをいただいています。

このように、地域で生きることの意味を問いかけるYMFGのメッセージが、高く評価されています。

4. ブランドコミュニケーションブック――三都をつなぐ物語

CMと並行して、YMFGは三都(山口・広島・北部九州)をテーマとした「ブランドコミュニケーションブック(YMfg)」を年4回発行しています。

創刊当初は三都の魅力を伝えるコンテンツを中心に展開。その後は「エネルギー」「まちづくり」「働き方」など、YMFGのマテリアリティに沿った特集に進化し、「YMFGらしさ」を前面に、地域と共に描く豊かな未来像を発信しています。

ブランドコミュニケーションブック(BCB)について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

5. YMFGブランドが描く、地域の未来

ブランドスローガン、CM、ブランドコミュニケーションブック、SNS――YMFGの各種の発信は、単発の広告キャンペーンではなく、「地域の豊かな未来を共創する」というパーパスを体現する統合的なブランド体験の提供を目指しています。

「全社員が誇りを持って共有できるバイブルのような広告」を打ち出し続けた結果、社員一人ひとりがブランドの担い手であるという意識を持ち、地域の可能性をさらに広げる挑戦に繋がっています。

 

「この世界で。この街で。このじぶん。」――このスローガンの下、YMFGはこれからも地域に根差しながら世界とつながり、地域と自分自身に誇りを持ちながら、豊かな未来に向けて共に歩むブランドとして、皆さまとのコミュニケーションを続けてまいります。