気候変動に関する基本的な考え方

地球温暖化の進行に伴って異常気象や自然災害の激甚化および頻発化が顕著となる中、気候変動への対応は世界共通の課題であると認識しています。 また、当社グループの主要エリアである山口県、広島県、福岡県は、瀬戸内海沿岸地域・北九州地域にコンビナートが形成され、上場大手企業およびそのサプライチェーンを中心にGHG多排出業種の工場が集積しているという産業構造から、CO2排出量は全国平均を上回る水準です。 このような状況を踏まえ、当社グループは、マテリアリティのひとつに「大気汚染・気候変動への対応」を特定し、気候変動への対応を経営の重要課題と位置付けています。

山口県

広島県

福岡県

CO2排出量(※)

24,431千t-CO2(全国14位)

37,063千t-CO2(全国9位)

30,657千t-CO2(全国12位)

人口あたりCO2排出量(※)

18.82t-CO2/人(全国3位)

13.54t-CO2/人(全国4位)

6.01t-CO2/人(全国35位)

  • 出所:環境省「部門別CO2排出量の現況推計(2023年度)」、総務省統計局「人口推計(2023年10月1日現在)」を基に当社推計

気候関連の情報開示(TCFDへの対応)

当社グループは、2021年12月にTCFD(※)提言に賛同して以降、2022年度より同提言に沿った情報開示を実施しています。

今後は、SSBJ基準の適用も視野に入れ、開示の充実を図ります。

  • TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures/気候関連財務情報開示タスクフォース):G20からの要請を受け、2015年に金融安定理事会(FSB)によって設立された、気候関連財務情報開示を企業等へ促す民間主導のタスクフォース

ガバナンス

気候変動への対応に関するガバナンスはサステナビリティ全般に関するガバナンスの中に組み込まれており、気候変動に関するリスクと機会の把握・管理の実施状況や、サステナビリティ推進委員会の下部組織である「環境対応ワーキンググループ」を中心とした各種施策の取り組みを取締役会が監督する体制としています。

戦略

1.リスク

(1)気候変動に伴うリスク

当社グループの事業特性や主要エリアにおける地域特性等を踏まえ、気候変動に伴うリスクについて、短期・中期・長期の時間軸で、以下のとおり認識しています。

主な評価項目

当社グループに与える主なリスク

時間軸(※)

移行

リスク

政策・法律

  • 炭素税・炭素価格
  • GHG排出量規制への対応

など

操業コストの増加・稼働率の低下・多額の設備投資等による、財務内容の悪化

  • 操業コストや製造/建造コストの増加・資産価値の低下・ブランド価値の毀損等により、お客さまの財務内容が悪化し、与信コストが増加するリスク

中期~長期

市場・技術

  • 消費者など顧客の行動変化
  • エネルギー価格
  • エネルギーミックス

など

カーボンニュートラル実現に向けた対応の不足による、ブランド価値の毀損

  • 気候変動に対する不適切な対応や不十分な情報開示により、当社グループの評判が悪化するリスク

短期~長期

物理的

リスク

  • 異常気象の激甚化

物損被害の発生や事業の中断による、事業継続性や財務内容の悪化

  • 風水災等の発生による事業活動の停滞や物損被害により、お客さまの事業や財務内容に影響を与え、与信コストが増加するリスク

短期~長期

  • 風水災等の発生により、当社グループの本支店が被災し、事業継続が困難となるリスク

短期~長期

  • 短期:3年未満、中期:3年~10年、長期:10年超

(2)シナリオ分析

当社グループは、気候変動に伴うリスク(移行リスク、物理的リスク)が事業に及ぼす影響を認識するため、複数のシナリオを用いたシナリオ分析を実施しています。

移行リスク

物理的リスク

リスク事象

  • 炭素税導入に伴う費用増加による与信先の財務悪化
  • 脱炭素社会への移行に伴う設備投資等の増加による与信先の財務悪化
  • 洪水被害による担保物件の毀損
  • 洪水被害による与信先の事業停止に伴う財務悪化

シナリオ

  • IEA NZE(ネットゼロ排出シナリオ)
  • IEA APS(公約シナリオ)
  • IPCC RCP 2.6(2℃シナリオ)
  • IPCC RCP 8.5(4℃シナリオ)

分析手法

  • IEAシナリオや公開情報等を基に、サンプル企業の2050年までの財務諸表を作成し、サンプル企業の財務への影響を把握
  • サンプル企業の影響度を分析対象セクター全体に展開し、与信関係費用の増加額を算出
  • ハザードマップのデータから洪水発生時の担保物件への影響、取引先の財務への影響を算出した上で、与信関係費用の増加額を算出

分析対象

  • 電力セクター
  • 自動車セクター
  • 海運セクター
  • 金属・鉱業セクター
  • 国内の事業性貸出先

分析期間

  • 2050年まで
  • 2050年まで

分析結果

  • 与信関係費用の増加額:最大460億円程度
  • 与信関係費用の増加額:最大40億円程度

(3)炭素関連資産

 当社グループは、TCFD提言を踏まえ、気候変動に伴うリスク把握に向けた取り組みとして、貸出金等に占める炭素関連資産(※1)の割合を算出しています。2026年3月末時点における当社グループの貸出金等に占める炭素関連資産の割合は50.9%となりました。

セクター

割合

エネルギー(※2)

4.9%

運輸

6.1%

素材・建築物

37.5%

農業・食料・林産物

2.4%

上記セクター(炭素関連資産)合計

50.9%

全セクター合計

100.0%

  1. 炭素関連資産:「エネルギー」「運輸」「素材・建築物」「農業・食料・林産物」セクターに関連する資産
  2. 「エネルギー」セクターに含まれる「電力」は、太陽光発電、バイオマス発電、風力発電等の再生可能エネルギー事業者を除く

2.機会

(1)気候変動関連の機会

当社グループは、気候変動に関する機会について、短期・中期・長期の時間軸で、以下のとおり認識しています。

主な評価項目

当社グループに関わる主な機会

時間軸(※)

商品・サービス

  • 脱炭素社会への移行に向けた地域の環境関連産業の成長に伴う金融・非金融面でのビジネス機会の増加

短期~長期

  • お客さまの気候変動対応やカーボンニュートラルへの取り組みを支援する金融・非金融面でのビジネス機会の増加

短期~長期

  • 自然災害の激甚化に対応したお客さまの防災体制強化・設備拡充を支援する金融・非金融面でのビジネス機会の増加

短期~長期

  • 短期:3年未満、中期:3年~10年、長期:10年超

(2)金融・非金融ソリューション
当社グループは、気候変動への社会的な対応を機会と捉え、お客さまのカーボンニュートラルへの取り組みを支援するため、GHG削減に向けた様々な金融・非金融ソリューションを提供しています。

地域のカーボンニュートラルに向けた金融・非金融ソリューション

地域のカーボンニュートラルに向けた金融・非金融ソリューション

地域のカーボンニュートラルに向けた金融・非金融ソリューション

地域のカーボンニュートラルに向けた金融・非金融ソリューション

また、提供する金融・非金融ソリューションについては、地域のお客さまの実態に応じて適時見直しを図っていく必要があると考えています。こうした認識のもと、アンケート調査(※)の実施により、気候変動や脱炭素にかかる地域のお客さまの取り組み状況や課題の把握を継続しています。
2026年に実施した最新のアンケート調査では、「補助金や融資制度等の充実」「セミナー等による情報提供」「人材育成への支援」といった脱炭素に関する支援ニーズは依然として高い水準にあることを確認しました。
また、脱炭素の取り組みを開始した契機として「外部関係者からの要請」を挙げた企業も一定数存在しており、こうした要請は今後さらに高まることが見込まれますが、同アンケートでは「脱炭素に取り組むメリット・意義が感じられない」と回答した企業も依然として多く、脱炭素に対する意識醸成に向けた働きかけが重要となります。当社グループは、金融・非金融ソリューションの提供を通じた脱炭素対応の支援に留まらず、自治体と連携したセミナー等による情報提供や意識醸成を継続することで、地域のカーボンニュートラルに向けた動きを加速させていきます。

  • 実施主体:一般財団法人ちいき未来研究所(当社グループは実施主体と連携してアンケート項目を設定した他、お客さまへのアンケート配布や回答依頼を実施)

地域のお客さまへのアンケート調査結果抜粋 (一般財団法人ちいき未来研究所「地域の豊かな未来につながる経営者アンケート2026 -詳細版-」より)

地域のお客さまへのアンケート調査結果抜粋①
地域のお客さまへのアンケート調査結果抜粋②
地域のお客さまへのアンケート調査結果抜粋③

リスク管理

気候変動に伴うリスクは、信用リスク、市場リスク、流動性リスク、オペレーショナル・リスク、風評リスクといったリスク・カテゴリーに波及し、各リスク・カテゴリーのリスクとして顕在化するというリスク・ドライバーとしての特徴を有しています。このような特徴を踏まえ、当社グループは、統合的リスク管理の枠組みの中に気候関連リスクを組み入れた上で、顕在化するリスクに応じて、各リスク・カテゴリーにおいて管理する体制を構築しています。

なお、各リスク・カテゴリーにおいて顕在化する気候関連リスク(移行リスク・物理的リスク)について、短期・中期・長期の時間軸で、以下のとおり認識しています。

リスクの波及

リスク・カテゴリー

移行リスク

物理的リスク

リスクの内容

時間軸(※)

リスクの内容

時間軸(※)

信用リスク

  • 脱炭素社会への移行に伴う事業環境の変化により、取引先の業績が悪化し、与信費用が増加するリスク

中期~長期

  • 風水災等の発生により、担保価値の毀損や取引先の業績が悪化し、与信費用が増加するリスク

短期~長期

市場リスク

  • 脱炭素社会への移行に伴う事業環境の変化により、取引先等の業績が悪化し、当社グループが保有する有価証券の市場価値が下落するリスク

短期~長期

  • 風水災等の発生により、取引先等の業績が悪化し、当社グループが保有する有価証券の市場価値が下落するリスク

短期~長期

流動性リスク

  • 脱炭素社会への移行に伴う事業環境の変化により、当社の業績や評判が悪化し、資金調達環境が悪化するリスク、預金が流出するリスク

短期~長期

  • 風水災等の発生により、取引先の資金需要が高まり、預金が流出するリスク
  • 風水災等の発生により、金融市場が混乱し、資金調達環境が悪化するリスク

短期~長期

オペレーショナル・リスク

  • 脱炭素社会への移行に伴う規制変更により、対応コストが増加するリスク、罰金・訴訟等により損失を被るリスク

短期~長期

  • 風水災等の発生により、本支店が被災し、事業継続が困難となるリスク、復旧コストが発生するリスク

短期~長期

風評リスク

  • 気候変動に対する不適切な対応や不十分な情報開示により、評判が悪化するリスク

短期~長期

  • 風水災等からの復旧対応や影響を受けた取引先への支援が不十分なことにより、評判が悪化するリスク

短期~長期

  • 短期:3年未満、中期:3年~10年、長期:10年超

また、当社グループは、環境・社会に負の影響を与える可能性のある特定セクターへの投融資に関しては、当社グループの「環境・社会に配慮した投融資方針」に基づき取り組むことで、環境・社会への影響の低減・回避に努めています。
なお、投融資方針を制定した2022年5月以降、方針に抵触する投融資は行っていません。

指標・目標

1.温室効果ガス排出量

(1)Scope1、2排出量(※1、2)

当社グループは、当社グループ自身のカーボンニュートラル達成に向けて、2022年11月に中長期目標として「2030年度までにCO2排出量(Scope1、2)ネットゼロ」を公表し、CO2排出量の削減に取り組んでいます。また、2025年度よりスタートしたYMFG中期経営計画(2025年度~2029年度)においては、最終年度である2029年度に1年前倒しでCO2排出量(Scope1、2)ネットゼロを達成することを目指しています。

Scope1、2排出量
  1. 算定対象範囲:当社および連結子会社
  2. 「環境省 温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」における排出係数に基づき算出

(2)Scope3排出量(※1)
当社グループは、2023年度よりカテゴリ15を含めたScope3の算定を行っています。
2025年度は、Scope3排出量の算定対象範囲の拡大に取り組み、算定対象を当社および連結子会社へと拡大しました。ただし、カテゴリ15(投融資)については、グループ内銀行(山口銀行、もみじ銀行および北九州銀行)を対象として算定しています。

計測項目(※2、3)

2025年度

(単位:t-CO2

カテゴリ1

購入した製品・サービス

53,586

カテゴリ2

資本財

30,949

カテゴリ3

Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動

1,824

カテゴリ4

輸送・配送(上流)

502

カテゴリ5

事業から出る廃棄物

337

カテゴリ6

出張

609

カテゴリ7

雇用者の通勤

1,606

カテゴリ11

販売した製品の使用

45

カテゴリ12

販売した製品の廃棄

154

カテゴリ13

リース資産(下流)

16,259

カテゴリ15

投融資(株式・社債、事業性融資、プロジェクトファイナンス)

17,849,437

合計

17,955,311

  1. 環境省・経済産業省「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン (ver.2.8)」及び環境省「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出量等の算定のための排出原単位データベース(Ver.3.6)」における排出原単位を用いて算定
  2. カテゴリ8、9、14における排出活動はゼロ
  3. カテゴリ10における排出については、下流におけるデータ取得の制約等により、合理的な排出量の推計が困難であることから算定対象外

(3)Scope3カテゴリ15(投融資)
金融機関は、その事業特性上、サプライチェーンにおけるCO2排出量の大半をScope3カテゴリ15(投融資)が占めます。そのため、グループ内に3つの銀行を有する当社グループにおいても継続的にカテゴリ15の把握に努めることが重要であると認識しています。
2025年度は、グループ内銀行における「株式・社債」、「事業性融資」および「プロジェクトファイナンス」を対象として算定しました。
なお、個社別の排出量の算定においては、ボトムアップアプローチ(※1)とトップダウンアプローチ(※2)の2つの方法を併用しています。

  1. ボトムアップアプローチ:各社の開示情報を取得することにより、事業実態を反映した排出量を計上する方法
  2. トップダウンアプローチ:投融資先が属する業種別の平均炭素強度(売上高あたりの排出量)を用いて排出量を推計する方法
Scope3カテゴリ15(3行合計)
Scope3カテゴリ15(3行合計)
Scope3カテゴリ15(山口銀行)
Scope3カテゴリ15(もみじ銀行)
Scope3カテゴリ15(北九州銀行)

2.サステナブルファイナンス

当社グループは、サステナブルファイナンスを通じて、気候変動対策をはじめとした環境課題や社会課題の解決に取り組んでいます。サステナブルファイナンスのうち、環境分野・気候変動対応に資するものについて、2022年度から2025年度までの累計実行額は5,042億円となり、2031年度までの長期目標を達成しました。引き続き、サステナブルファイナンスの推進を通じて、持続可能な社会の実現に貢献していきます。 

サステナブルファイナンス(3行合計)

サステナブルファイナンス定義

当社グループは、環境課題や社会課題の解決に資する投融資やお客さまのサステナビリティ向上に向けた取り組みをご支援する投融資をサステナブルファイナンスと定義しています。具体的には、以下の内容のうち1つでも該当する場合、同ファイナンスの対象としています。

商品:私募債(寄付型・BCP策定支援サービス付等)、サステナビリティ・リンク・ローン、グリーンローン、ソーシャルローン、ポジティブ・インパクト・ファイナンス等

資金使途:再生可能エネルギー導入、創業関連、事業承継資金等

業種:医療、介護・福祉、教育関連

サステナブルファイナンス(山口銀行)
サステナブルファイナンス(もみじ銀行)
サステナブルファイナンス(北九州銀行)

3.外部評価

当社グループは、環境関連情報開示における国際的な非営利団体であるCDPの気候変動調査に対し、2022年以降、毎年回答を実施しています。
2025年の評価結果は、2024年に引き続き「B」スコア(※)となりました。

  • 8段階のスコア(A、A-、B、B-、C、C-、D、D-)のうち、上から3番目の評価。マネジメントレベルとして位置付けられ、「自社の環境リスクや影響について把握し、行動している」と評価されたことを示す
CDPスコア推移

「省エネ・地域パートナーシップ」への参加

当社グループ銀行(山口銀行・もみじ銀行・北九州銀行)は、資源エネルギー庁が設立した「省エネ・地域パートナーシップ」(以下、本パートナーシップ)に参加しています。
本パートナーシップは、資源エネルギー庁が、金融機関や省エネ団体(省エネ診断等の実施団体)との連携を強化し、中小企業の省エネに向けた取り組みを支援する体制を地域一丸で構築するために立ち上げた新しい枠組みであり、200を超える金融機関や省エネ支援機関が参加しています。
当行は資源エネルギー庁や本パートナーシップに参加している団体と連携を図り、補助金等の情報提供や省エネ診断等を含むコンサル機会を提供し、地域のお客さまの省エネ活動を支えていきます。

「省エネ・地域パートナーシップ」のイメージ

省エネ・地域パートナーシップのイメージ図

省エネ・地域パートナーシップ憲章

省エネは、エネルギーコストの削減に直結するとともに、カーボンニュートラル実現に向けた第一歩として、重要な取組です。
中小企業等の省エネを後押しするため、私たちは次の行動を起こすことで、地域の身近な支援者として伴走し、地域の省エネ推進に貢献します。

 

  1. 地域中小企業等の省エネ取組の実態を把握し、必要な支援を適切かつ継続的に実施します。
  2. 地域中小企業等の身近な相談先として、省エネに関する相談に丁寧に対応します。
  3. 省エネ診断や省エネ設備導入支援をはじめとした省エネ支援策に関する情報を収集した上で、地域中小企業等に助言・発信します。
  4. 必要に応じて他の関係機関とも連携し、地域中小企業等のニーズに合った支援策を検討します。
  5. これらの取組を効果的に行うため、省エネに関する知見の習得や提案力の向上に努めます。